ルンバ
この記事は今から五年ほど前の話。
まだ私が社会人になって間もない頃でした。
とある恋愛マッチングサイトで知り合った年上の男性との話を書きます。
最初は仲良くごはんに誘ってもらったり、順調な関係を築いていましたが…?
最後まで読んでいただければ嬉しいです。
恋愛マッチングサイトでのやりとり
ネット友達とは恋愛マッチングサイトで知り合いました。
私がまだ二十代前半、これから将来を見据えた相手を探そう!と意気込んでいた時期です。
やりとりは彼からのメッセージがきっかけでした。
「Aって呼ばれてます」
「職業:会社員」
「年齢:〇〇歳(当時の私より二つ上でした)」
「〇〇市在住」
あっ隣の市だ。
「カフェが好きでよく行きます」
おっ。話が合いそう。
プロフィールはあたり触りない文章で、メッセージも毎日続きました。
「今度ご飯行かない?」
彼からの誘いに私はテンションMAX!
すぐOKし、後日会うことに!
実際会ってみて…?
最初に選んだ場所は、仕事終わりの夜八時半、お洒落なイタリアンレストランの前。
「…ルンバさんかな?」
振り向くと男性の姿が。
やや小洒落たゆったりしたグレーのカーディガンに、濃い目の紺のカーゴパンツ。
確かにお洒落なカフェで一人でコーヒーを飲んでいそう。
背は高いとは言えないけれども、私よりは高い。
この人か。
悪くはないな。
「あっはい!こんばんは!Aさんですね!」
「中に入ろっか」
「はい!」
席を案内され、メニューを手に取る二人。
「すみません」
彼が注文をする。
料理が来る。
お互いどんな仕事をしているのかとか、普段どんなお店に行くとか、たわいもない話が続きました。
「僕、普段は会社員やってるんだけど、休日は友達とカフェもやってるんだ。
よかったら今度お店に来ない?
お友達も連れておいでよ」
そう言いながら彼が見せてくれた写真は、ワンプレートにカレーライスに色彩豊かな旬の野菜が添えられたランチメニュー。
まさにSNS映えしそう。
「すごい!こんなの作れるの?行きたい行きたい!」
後日私は友達を1人誘って彼の指定する場所へ向かいました。
彼の友人達
彼の指定する場所はとある市内の二十数階建てのタワーマンション。
「えっ、こんなところにカフェ?」
マンション前で友人とそわそわしていると、中からエプロン姿の彼が出て来てくれました。
「ごめんごめん分かりにくかった?こっちだよ」
中に入り案内されたのは、十六階にある一室。
中に入ると
「こんにちは!Aの友達?」
通されたのは、三十畳くらいあるラウンジのような部屋でした。
奥には広いバルコニーもあります。
二十人くらいの人たちが集まっていました。
えっこんなに大勢?
聞いてなかった…。
少し緊張。
「みんな僕の友達なんだ。
みんなフレンドリーだからさ。
リラックスして。さ、座って座って」
私と友人は彼の友人が囲むテーブルに案内されました。
「Aの友達なんだ、はじめまして!」
「もう少しで出来るから、Aさんカレー!
Aさんのカレー、めっちゃ美味しいんだよ!」
数分後、出てきたのは以前写真で見たような、お店で出てくるカレーでした。
「いただきまーす!」
「うわ、美味しい。」
「でしょ!」
Aさんの友人達は、みんな場慣れしているのか、本当にフレンドリーでした。
みんな誰が何の仕事をしているとか、出身がどこだとか、オーソドックスな話を明るくしてくれ、そこから二時間くらいみんなで盛り上がりました。
みんな職業も出身もバラバラ。
社会人になって、会社以外で出会いがなかった私は、新しい友達が出来たような気持ちで新鮮でした。
その日Aさんと話す時間はほとんどなかったけれど、今度また二人で会って話そう。
もっと彼のことを知りたいと思いました。
何とも言えない違和感
翌週は私からAさんを誘って二人でご飯に行きました。
「この後前のカフェのところに行く?友達もいるよ」
とAさんは言いました。
そのまま彼の言われるがまま、以前と同じタワーマンションに移動しました。
それから週に1回は彼と会うようになりましたが、毎回二人きりで最後まで過ごすことはなく、彼の友人達がいるマンションに移動し、みんなでお酒を飲むという流れがルーティンになりました。
私は友人のだいたいの顔と名前は覚えるようになり、グループラインもできました。
集まるメンバーは五、六人の時もあれば、二十人くらいの時もあり、入れ替わり立ち替わり色んな人が来ます。
彼らとはすっかり自分の友達のように振る舞えるようになりました。
聞けば、彼らはほぼ毎日このタワーマンションの一室に集まっているそう。
楽しい気持ちとは裏腹に、平日の夜に、何でこんなに人数が集まるんだろう。
みんなそんなに仲いいのかな。
何がきっかけでこんなに仲良くなるのかな。
本当に素朴な疑問をAさんや友人に聞いてみましたが、いつもうやむやというか、はっきり答えてくれることはありませんでした。
Aさんは私とはご飯には行きますが、夜景を見に行ったり、ご飯以外に出掛けたり、いわゆる「デート」らしいデートには一度も私を誘うことはありませんでした。
私はこのまま恋愛関係に進んだ方が彼のことを知れるから、もう少し親密になりたい。
そう思っていました。
けれど恋愛の話やご飯以外の話をそれとなくAさんにすると、なんとなくはぐらかされたり、答えづらそうにしていたり。
Aさんはなぜマッチングサイトを使っているんだろう。
恋愛相手を探しているのではないのか?
女友達がほしいだけなのか?
自分の中で違和感といいますか、何ともいえない気持ちで、確信をつけずに2か月が経ちました。
彼の目的が判明!
Aさんと出会って2か月経った頃、私とAさんはいつものように他の友人達とマンションの一室にいました。
たまたま美容の話になり、
「私ニキビですごい悩んでるんだよね」
と何気なく話すと、リーダー格の一人が
「それなら、いいのがあるよ。」
と言い、分厚いパンフレットを持ってきました。
「ア〇ウェイって知ってる?
ここの製品ならね、無香料、無添加で…」
とすごい真面目な顔でつらつらと説明してきました。
部屋のどこからこの話を聞きつけていたのか、いつのまにかAさんも私の背後で真剣な顔でこっちを見ています。
その時、私はやっとわかりました。
「ビジネス勧誘されてる!」
気付くのが遅すぎましたが、Aさんの目的はア〇ウェイの商品を私に購入させることでした。
ア〇ウェイとは、ア〇ウェイ社の商品を購入させることで、自分にマージンが入る商売です。
点と点がやっと線になった!そんな気がしました。
「…。」
私は終始黙ったままで、周りも
「…ルンバちゃん、大丈夫?体調悪い?」
と変わるがわる私の顔色を伺う伺う。
いや、違うわ!
自分が金ヅルと思われてたんが腹立っとんねんこっちは!とは言えず、
「あ、うん。帰るね。じゃあ。」
とだけ行ってマンションを出ました。
後ろからAさんが追っ掛けて来て「駅まで送るよ」と言ってきましたが、彼の顔を見ずに
「ううん。ここでいい。」
とだけ言って帰りました。
Aさんもあの友人達も全員ネットワークビジネスのメンバーだったんや。
めっちゃくちゃ悔しくて、帰り道、始めにカフェに一緒に行った自分の友人に泣きながら電話しました。
その後、Aさんや友人からは、グループラインやら個人ラインやらで連絡が来ましたが、全部無視してブロックしました。
それ以来、男性に会う前には、
「ビジネス勧誘とかない?大丈夫?」
と必ず聞くようにしています。