ひまり
約10年前、当時流行していたSNSで知り合った男性との甘酸っぱい思い出です。
遠く離れた沖縄で暮らす素敵なパーフェクトイケメン。
彼にはある秘密がありました。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
最高!気軽にネット友達ができるSNS
私が大学生の時の話です。
彼とはその当時流行っていたSNSで知り合いました。
そのサイト上ではゲームもできましたが、メッセージで知らない人とやりとりをすることができました。
次から次に男性からメッセージが来るので、彼氏がいなかった私は激ハマり!
女友達ともその話題で盛り上がることがしょっちゅうでした。
沖縄のイケメンからメッセージが!
ある日、沖縄在住の男性「海斗(カイト)」から私あてにメッセージが届きます。
詳しくはうろ覚えですが、
「友達になりましょう!」
的な内容だったはずです。
私は当時、中国地方の大学に通っていたので、
「なんで沖縄の人が?」
と思いましたが、沖縄というザ・リゾートに憧れもあったので、
「仲良くなればいつか遊びに行って会えるかも!」
とウキウキはMAXに!
もちろんすかさず返信しました(笑)。
イケメン「海斗」のスペック
・沖縄出身/沖縄在住
・介護士1年目の22歳
・海でゆっくり景色を見ながらのんびりするのが好き
・彼女はいない
・写真は全身の後ろ姿、細身、雰囲気で判断する感じ…めちゃくちゃオシャレイケメン!
プロフィール写真は後ろ姿なので顔を確認できませんでしたが、さわやかショートへアでもう絶対イケメン確定!
「こんなかっこいい人からメッセージが来るなんて、私めちゃくちゃラッキー!」
とものすごく舞い上がっていました。
あれ…私、好きかもしれない
初めてメッセージをくれてから、他愛もない会話が数カ月毎日続きました。
私 「海斗くんはどんな音楽が好き?」
海斗「ロックとかバンド系が好きかな~、あ、でも沖縄の音楽も好きよ、みんなで踊るのもめちゃくちゃ楽しいし、ひまりは?」
私 「今日も仕事おつかれさま~!」
海斗「疲れてへとへと~明日は休みだ~!服買いに行きたいよ~!」
オシャレが好きで、優しくて癒し系の海斗くん。
想像の中の海斗くんはどんどんイメージが膨らみ、会ったことも直接話したこともない海斗くんに次第に恋愛感情を抱くようになりました。
ある日私は意を決して
「海斗くんって彼女いないって言ってたよね?どんな子がタイプ?」
と思い切って送信!
海斗「そうね~、優しくて面白いひまりみたいな子が好きだな~」
…いや、もうありがとうございます。
好きです!大好きです!
もう絶対会いに行く!
と、私はベッドの上で大はしゃぎしていました。
想いが募ってアピールした結果
「ねぇねぇ、電話してみてもいい?」
好きが抑えきれない私は、話してみたいとメッセージを送ってみました。
しかし、彼からの返信は、
「ごめん、いま電話できないさ~、この携帯、電話しようとしたら音聞こえない状態になるのよ…友達ともメールのやりとりだけでなんとかしてる(笑)」
私 「そうだったの!?じゃあ、電話機能が直ったら話そう!」
海斗「そうやね~ごめんね!ちょっと待ってね!」
電話機能壊れてる…。
いまならそんなのすぐ直して!と思うところですが、当時の私は超が付くほどピュアで「恋に恋する乙女」状態だったので、電話で話せる日を夢見て待つことに。
連絡を取るようになって半年後、ついに…!
「電話しよう!」の提案を断られてからも、相変わらずメッセージのやり取りは続いていました。
海斗「いつ沖縄来る?」
私「来月、春休みに行けたらいいなあって思ってるよ~」
海斗「ひまりが来たら、いろんなとこ案内してあげるよ~!
おいしい料理のお店とか、俺の一番好きなビーチとか、楽しみさ~」
電話の件、すっかり忘れられてるっぽいけどもう直接会いに行くからどうでもいい!
と、私も相変わらず優しい彼に夢中な日々を送っていました。
来月の春休みが楽しみすぎて、日程や行きたい場所のリサーチを進めてウキウキの毎日。
そしてついに!
「ねぇねぇ、沖縄に行く日3月〇日あたりにしようと思うけど、会えそう?」
と具体的な日程を彼に送信したのです。
海斗「3月〇日から3日間くらいね、仕事の予定見てみるよ!…もう飛行機の予約した?」
私「ううん、まだだよ!海斗くんがOKだったら予約しようと思って」
海斗「…そういえばひまり、俺と電話したいって言ってたよね」
私「うん!そうだよ~電話なおった~?」
海斗「…うん、直したよ~!
ていうか俺…ずっとひまりに隠してたことある」
私「え…?なになに…?」
沖縄イケメン、実は…!?
ん?なんだろう?
実は沖縄に住んでないとかやめて欲しい(笑)。
「じゃあ、電話直ったなら話してみよ!そこで発表して!」
それからすぐ海斗くんから電話がかかってきました。
海斗「もしもし?わかる?海斗なんだけど」
私「はじめましてだね~!」
海斗「うん、はじめまして…」
私「何?どうしたの~?」
海斗「ごめん、海斗ってね、本当の名前じゃないからね」
いや、何!そんなこと!?
別にいいんですけど!
ネット上の名前だったってことね!
私「いや、そんなの全然いいよ~!じゃあ本当の名前は?」
海斗「……夏海(ナツミ)」
中性的な名前だなあ、でも海斗くんっぽくてなんだかぴったり!
と、思った次の瞬間、
海斗「うん…海斗ってね、女なわけよ」
私「え…?え~~~~~~っ!?」
しばらくパニックになりつつ、これまでのやり取りのことが次々とよみがえってきます。
ファッションが好きだけど、身体が細いからレディースでも大丈夫、デザインも可愛いし、と言っていたこと。
電話機能が壊れたと言ってから何カ月も電話を拒否してきたこと。
などなど、実は彼が女性だったということに思い当たる節がどんどん出てきました。
こんなにかっこよくて大好きな海斗くんが、実は女だったなんて!
とものすごく驚きましたが、不思議と受け止められる私がいました。
海斗「だから…ごめんね、会いに来てくれるって言ったけど、会わない方が良いと思う、ひまりの気持ちは何となくわかってて、でもひまりが好きなのは海斗でしょ、嘘ついててごめん」
私「ううん、びっくりしたけど…私海斗くんが女でも会ってみたいって思うよ!」
海斗「いや、なんかね…ひまりが大切だから、沖縄来て会ってやっぱりがっかりさせるのが申し訳ないわけよ」
しばらく話し合いが続いた結果、彼(彼女)の気持ちを考えて沖縄に遊びに行く件は中止することにしました。
その後
夏海はなぜ男性としてSNSをやっていたのか、どんな想いだったのかということを話してくれました。
今ではトランスジェンダーという言葉も知られるようになりましたが、当時の夏海にとっては周りにはオープンにしづらく、悩むことも多かったそうです。
私の憧れのイケメン「海斗」は私の妄想の中だけで消えてしまいましたが、その後も夏海とのやりとりはしばらく続いたあと、いつのころからか連絡も途切れ途切れになり、私が社会人になってからは完全に連絡を取ることもなくなってしまいました。
10年以上が経って、いつの間にか連絡先もわからなくなってしまった夏海。
今も沖縄で幸せに暮らしているかな、ふと思い出すことがあります。
出会えてよかったと思うネット友達です。