チャットで出会ったネット友達は、内向的な僕を変えてくれた大切な人。

さとる

こんにちは。
35歳独身男性のさとるです。
これはすごい昔になってしまいますが、僕が中学生の時です。
その頃学校の授業でパソコンを使い、ネット上でチャットをする時間がありました。
僕は男だったにもかかわらず、女子中学生として遠い県外の女生徒と仲良くなったのです。
女の子として女生徒を騙すような形になってしまった結果、どんな事が起きるのか。
良かったら僕の思い出話を聞いていただければ幸いです。

ネット友達のみやちゃん

僕は女子中学生のエイコになりすまし、県外の女子中学生みやちゃんとチャットをする毎日。
僕は吹奏楽部でコントラバス、彼女は吹奏楽部でチューバを吹いているという低音組ということで共通点で仲良くなりました。

僕がエイコとして友達と立ち上げたチャットルームにみやちゃんが入室してくれたのが最初のきっかけです。
僕は友達と女の子のふりをしてチャットをするのが流行っていたので、最初はなんの罪悪感もなく、みやちゃんとも話していました。
しかしその友達も別のチャット友達ができたこともあり、チャットルームにはみやちゃんとエイコの入室のみとなりました。

みやちゃんとは毎日の学校や授業の愚痴や、部活でやっている曲の話などで盛り上がることもしばしば…。
僕たちは文章だけの繋がりでしたが、友達には言えない愚痴なども、文章を通して共感しあっていたのを覚えています。

みやちゃんは優しく後輩思いの女の子で、どうやったら男女の後輩と上手に話せるかなど悩んでいました。
僕は男の後輩の気持ちを代弁し、女子には分からない些細なことや、女子に言われたら悲しいことなどをエイコとして伝えたりしていました。

みやちゃんの信頼感

エイコは自信たっぷりで、活発な女の子。
友達も多くみんなからの人気者!
というイメージでチャットをしていたため、みやちゃんからも慕われている感じがひしひしと伝わってきました。

僕も最初は憧れる人物像になりきってみやちゃんの相談に乗り、優越感すらありましたがやはり憧れは憧れです。
僕には理想像のエイコにはなりきれません。

本当の僕は女子にたいしても消極的だし、自分にも自信が持てません。
クラスのランク的にも中の下くらいをふらふらしている僕は、エイコとして保つことに疲れてきてしまいました。

そして、優しいみやちゃんを騙してしまっているという罪悪感。
女子になりきれない僕。

どんどん自己嫌悪に陥っていきます。
人を騙している。
当時の僕には重荷になってきてしまいました。

いつか、言わなくてはならない。
優しいみやちゃんをこれ以上騙し続けるわけにはいかない。

気づけばあったこともないみやちゃんにほんのり恋心をいだいていたのです。
その頃には僕の家にもパソコンが来て、家でもみやちゃんとチャットするようになりました。
僕はいつかエイコが男だと告白をしようと思い始めたのです。

告白

みやちゃんとチャットをするようになって3ヶ月。
最近みやちゃんがクラスの男子の相談をしてくるようになりました。
その男子はみやちゃんをみると目をそらすくせに、授業中後ろからちょっかいを出してきたりするようで、みやちゃんは怒りながらすこし嬉しそうな文章。

エイコはからかうように、その男子のことが気になってるんじゃない?と問いかけます。
みやちゃんからの返信に時間がかかります。

エイコちゃんって彼氏いる?と返信が…。
僕はざわっとした胸騒ぎを覚えています。

彼氏なんていたことないのに、思わず昔いたと嘘をついたエイコ。
みやちゃんはみんなが言う好きとか嫌いとか分からないの…と。
僕だって分からない!

けど、毎日みやちゃんとチャットをして、あったこともないみやちゃんの、顔を思い浮かべ話題を探すのです。
みやちゃんに喜んでもらいたい。
悩みを聞いてもらいたいし、悩みを聞きたい。

友達とはまたすこし違うネット上での二人のやり取り。
僕はエイコとしてほぼさらけ出すことができていました。

みやちゃんの事が好き。
これは確信へと変わっていきました。

でも、みやちゃんにエイコが実は男だったと告白したら絶対幻滅されてしまう!という恐怖が勝っていました。
そこで僕は理想のポジティブなエイコになりきってみやちゃんとの、日々を守ることを選択しました。

初めてのネット友達

ポジティブなエイコを演じる上で、クラスの人気者が話している会話にも耳を傾け、動向なども観察するようになりました。

そんな、僕にも少しずつ変化が現れました。
今までは内向的で周りからの視線や評価を気にするような人間だったにも関わらず、対面的にはポジティブに考えられるようになったのです。

みやちゃんという顔も知らない、声も聞いたことのない女子生徒とのやりとりで、僕は家族や姉の会話も弾むようになりました。
下を向かない。
これだけでも中学生の僕には万歳でした。

結局みやちゃんには性別は明かさず、卒業までの一年間、チャットを繰り返していました。
卒業してからは各々高校も部活も忙しく疎遠になってしまいました。

未だに思い出すことがあります。
顔も知らない相手だからこそ、好きになったのかもしれないし、素直になれたことは大きいと思います。

みやちゃんとエイコとして話せたことはいい経験です。
少しでもポジティブなエイコに近づくこともできました。
初めてのネット友達はいい思い出でいっぱいです。