「異性のネット友達」に対する偏見を変えてくれたのは、1枚のチケット

ミリ

はじめまして。都内でOLをしているアラサーのミリと申します。

今回は、5年ほど前にSNSで知り合った男の子との出会いを書いてみようと思います。

偏見で凝り固まった私をそっとほぐしてくれた、そんな優しい出会いでした。
暇つぶしがてら、私の思い出話にお付き合い下さい。

異性のネット友達なんて危ない

小学生の時からネットの世界に飛び込み、20年近くが経ちます。

今でこそインターネットはとても身近なものになりましたが、あの頃は「ネチケット」と呼ばれるインターネットマナーが重んじられ、両親からも

「顔が見えない分慎重にならなくてはいけないよ」

と厳しく教えられていました。
とはいえ、せっかくたくさんの人がいる世界。

友達を作らないなんて損!
そうして私はたくさんのネット友達を作り、毎日を楽しんでいました。

ただ、そんな私には1つだけ絶対に守り続けているルールがありました。それは、

「男の人とは親しくならない」

ということ。
チャットルームで男の子と言葉を交わすことはあっても、個人的に連絡先を交換することは決してしませんでした。

なぜそんなルールを決めたのかは思い出せないのですが、きっと、幼いながらに

「男女の関係はもつれやすい」

と感じていたのだと思います。
マセガキですね(笑)
すっかりネットが普及した現代。

ネットで知り合った男女のトラブルや事件を見聞きするたび、私は「ほらね」と呆れていました。
異性のネット友達なんて、危ない。

幼い私が直感で感じていたものが、的中したような気分だったのです。

きっかけは1枚のチケット

そんなお堅い偏見女に、5年前の夏、転機が訪れました。
友人と行くためにとったアニソンフェスのチケットを1枚余らせてしまったのです。

周りに興味がありそうな友人も居なかったので、Twitterでチケットのお譲り先を募集するツイートをしてみました。
数日後、Yさんという男の人からリプライが。

早速内容を確認すると、チケットを譲って欲しいということと、公演日が近いので郵送では間に合うか不安だから当日手渡しで取引したいという旨が書かれていました。

「男の人とは親しくならない」

幼い頃からの自分ルールが一瞬頭を過ぎりましたが、

「別に親しくなるわけじゃないし。ていうか私、もういい大人だし」

すぐにそう思い直し、了承の意と待ち合わせ要件を簡単にまとめて返信をしました。
当日、会場付近の駅でYさんを待っていると、

「ミリさんですか?」

と声をかけられました。

顔をあげて目が合ったのは、爽やかで小生意気そうな男の子

「Yです。お待たせしました」

そう言ってキャップを外して会釈をしてくれたYさんの礼儀正しさを見て、心底ほっとしたのを覚えています。
親しくならないとは言え、ネットで知り合った男の人と直接会うことに緊張していたのだと思います。

私達は挨拶もそこそこに、チケットとお金を交換し、中身を確認し、お礼を伝えて別れました。
時間にすると、3分もかからないほどでした。

それから私は友人と合流し、アニソンフェスを全力で楽しみました。
楽しかったねーとビール片手に友人と感想を語り合っていると、Twitterからの通知が。

あまりの楽しさで存在自体すっかり忘れていた、Yさんからのメッセージでした。

「こんばんは。今日はありがとうございました。●●推しなのでとても楽しむことが出来ました。夜遅いので、気をつけて帰って下さい

たしかこんな感じの内容だったと思います。
朝一で会った彼の顔を思い返し、小生意気そうな見た目と文面の真面目さのギャップがおかしくて思わず笑ってしまいました。

そして、帰り道を気にかけてくれる気遣いに、なんだかくすぐったい気分になりました。
お酒の力もあってか、心浮き立った私は彼に返信を打ったのです。

「ご丁寧にありがとうございます。●●、セトリ神でしたね!Yさんも気をつけてお帰り下さい」

「●●を褒めてくれる女の人初めて会いました!めっちゃ嬉しいっす!」

少し砕けた文末がなんだか可愛くて、私は更に返信を打ちました。

人付き合いはネットもリアルも変わらない

こうして私達は、他愛のないメッセージのやり取りをするようになりました。

幼い頃からのマイルールを破っているかのような罪悪感がありましたが、

「ダイレクトメッセージは個人情報を公開する必要はない!匿名性のあるツールだ!」

そう言い聞かせ、Yさんとのやりとりを楽しんでいました。

ある日、
「チケット譲ってくれたのがミリさんでよかったわ」
なんて嬉しいことを言ってくれるものだから、私も少し素直になってみようと本音を伝えてみました。

ネットで知り合った男の人と直接会うのが怖かったこと。
待ち合わせ場所に現れたYさんの礼儀正しさに安心したこと。

いい年して子供っぽいかなと思ったのですが、彼は全てを受け止めた上で、ひとつ付け加えました。

「怖いのも警戒するのもわかる。でも、それはネットだけじゃなくてリアルでも気をつけなくちゃいけないこと。逆に言えば、ネット=絶対危ないって訳でもないって思ってもらえたら、男としては嬉しいかな」

目が覚める、という比喩を心底痛感した瞬間でした。

最終的には人と人との関わり合い。
それはネットでもリアルでも変わらないことを、20代半ばにしてやっと気付くことが出来たのです。

顔が見えないから、匿名だから、なんとなく危なそうだから…そんな偏見だけで危ないと決め付けていた自分を恥じました。

それから

それから1年くらい、私とYさんはやりとりを続けていました。
毎日という訳ではないですが、こんなイベントに行ったよとか、●●の新曲聞いたよとか、今日は寒いねとか、なんてことのない話です。

彼は当時大学生だったのですが、就活するか院試を受けるかでとても悩んでいたので、

「忙しいんだから返事は気が向いたときでいいよ」

と声をかけていました。

そうして徐々にメッセージの数が減り、連絡が途絶え、今に至ります。

一報入れてみようかと思いましたが、なんだか私が寂しがっているような格好になるのが悔しいので、当時やりとりをしていたアカウントを消去しました。

もう彼とのやりとりを遡ることもできませんが、人付き合いにおける大切なことに気付かせてくれた彼との思い出は、今も胸に残っています。