ネット友達とネトゲ結婚できそうでできなかった、情けない僕の回顧録

しょういち

この話は、私しょういちがネトゲ黎明期に巡り合った、ある一人の女性との思い出です。

今となってはもう連絡も取り合っていませんが、ネット友達ではもっとも長く付き合った異性の一人でした。

私たちがどのようにして出会い、仲を深め、そして物別れに至ったのか。
つまらない話ですが、良ければお付き合いください。

出会い

当時のネトゲというものはまだゲームシステム的に手探りな部分が多かったと言いますか、一言で言えば不親切、ユーザーに丸投げする要素が多々ありました。

マッチングシステムなんてものは影も形もなく、パーティーを組まないと経験値稼ぎにもいけないのに、そのパーティーメンバーを募集するだけで1時間くらいかかったりとか、そりゃもう日常茶飯事でした。

そこで少ない時間を有効に使って遊ぶために、同じ時間帯に一緒に遊べる固定メンバーを作るのが主流でした。

ちなみに当時はメッセンジャーというソフトを使って連絡先を交換しあうのがメジャーだったりしました。
平たく言えばスカイプやLINEのご先祖様的な存在です。

そんなわけで固定メンバーを組もうといいう考えに至った私は、たまたま目に入った募集メッセージに目を付け、募集主さんに声を掛けました。

「混ぜてもらってもいいですか」、と。
そして時を同じくして、同じく募集に惹かれてやってきた人がいました。

その人こそ、私のネトゲプレイ歴における最初にして最後の、そして最高の相棒となるAさん(仮称)でした。

ゲーマーはゲーマーに惹かれる?

Aさんはいわゆる「やりこみ」勢で、それも既存の攻略に縛られることを嫌い、自ら検証と考察を重ねて独自の攻略スタイルを編み出すことを良しとする、なかなかに硬派なハードゲーマーでした。

当時は「女性ながらに珍しい気質の人もいたもんだ」と思ったのをよく覚えています。

Aさんの検証に付き合うのは大抵いつも私で、それが妙に楽しかったのを覚えています。
なにせ、かくいう私も仕様の穴をつくのが大好きな捻くれゲーマー。

Aさんが「コレとコレを使ってこんなことできないかな?」と発案し、「面白そう!試してみよう!」と乗っかる私、というノリが固定メンバー内で定番のやり取りの一つになっていたのです。

ゲームにINしてない時でも、メッセンジャーを使ってどの狩場の経験値時給がいくらだとか、相場より安い値段でレアが売ってるだとか、色々な情報交換に花を咲かせていました。
そんなやりとりを繰り返しているうちに、自然とお互いのことも話すようになっていきます。

メンテ明けを待ちながら、今日のご飯は何だったとか、いつもどんなゲームやってるのとか、他愛もない雑談に興じたものです。

このあたりから単なる固定メンバーから、ネット友達と言える関係に至っていたのだと思います。
彼女が私のことを「しょうちゃん」と呼び始めたのは、確かこの頃からだったような気がします。

一方で私は最後まで彼女のことは「あだな + さん付け」と、どこか他人行儀な呼び方を貫いていたのですが。ヘタレてますね。

ともあれ、私はだんだんとAさんの人柄に惹かれている自分を自覚するようになりました。

当時は未だAさんが本物の女性かどうかも不明でしたが、どこか強引なようで気遣いのできる部分や、喋り方の飾らなさなどに、おそらくは女性であろうという確信は常に強くあったのです。

初めての通話

そんな日々が続く中、私は別のネットゲームに興味を惹かれ、Aさんと遊んでいたゲームへのIN率が少しずつ低下していきました。

自然とメッセンジャーでチャットする機会も減っていき、私たちの関係は疎遠になっていきます。
そしてしばらくたってから、半ば引退状態だったそのゲームに大型アップデートが実装され、私は久しぶりにそのゲームにログイン。

Aさんには「引退したんじゃなかったのか」などとからかわれつつ、また一緒に遊ぶようになります。

もちろんメッセンジャーでのやりとりも再開するようになったのですが、そこでAさんから意外な一言。

「しょうちゃんに嫌われたのかと思った」私としては驚きの一言です。

単に別ゲーに浮気していただけで、人間関係のトラブルなんて意識したこともなかった私にとって、彼女の言葉はあまりにも予想外でした。

そんなことはない、ということを思わず熱弁する私ですが、一体どういう流れでそうなってしまったのか。
「ちょっと通話してみない?」とこれまた私にとっては衝撃の提案。

もっともこの時すでに年単位の付き合いになってたので驚きこそすれ拒否感などなく、私は二つ返事で了承。

実際に話してみた彼女は、まったくチャットから受けたイメージ通りでどこかさっぱりとした気風の、けど想像よりも少しだけゆっくりとした喋り方の女性でした。

当時実装された新システムである結婚を二人で試してみようか、なんて冗談めかして話し合ったりもしました。

これがAさんとする、最初で最後の通話でした。
彼女が結婚について言及した真意は、今でも分かりません。

自然消滅……ということにして逃げ出した私

さあここからどんなふうに盛り上がるんだ?

と期待された方には申し訳ありません。
ここで私たちの思い出はお終いです。

一言で言えば、私の方が彼女との仲が深まることに臆してしまったのです。

アップデートを機に出戻ったとはいえ、私は一度引退しかけた身。
再びゲームへの飽きが来るのは早く、一方でAさんはまだまだそのゲームを遊ぶつもりのようでした。

私はゲームというツールを介さずに彼女と付き合いを続けていくことが、何故かどうしようもなく怖くなってしまい、再び徐々にIN率を下げていき、今度こそ完全に疎遠になってしまったからです。

自分の中の感情を持て余した末に投げ出してしまったわけです。
あの日初めて通話した夜、もっと踏み込んでいたら何かが変わっていたのだろうか?
もっと自分自身の気持ちとしっかり向き合うべきだったのではないか?

と今でも時々思い返します。

以上が私が経験した、恋愛とも言えような情けない恋の末路です。

長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。